現在、日本で世界遺産に登録されているのは全部で14件。うち、自然遺産は3件、文化遺産は11件です。 2007年のニュージーランにおける第31回ユネスコ世界遺産会議で島根県「石見銀山遺跡とその文化的背景」が文化遺産に登録され、 石見銀山に続け! と、各地でますます世界遺産登録運動が盛り上がりをみせています。
日本が暫定リストに挙げているのは次の8件です.
●文化遺産 ・古都鎌倉の寺院・神社ほか(1995年1月) ・彦根城 - (1995年1月) ・平泉の文化遺産 - (2001年6月) ・富岡製糸場と絹産業遺産群 - (2007年1月) ・長崎の教会群とキリスト教関連遺産 - (2007年1月) ・飛鳥・藤原の宮都とその関連遺産群 - (2007年1月) ・富士山 - (2007年1月) ・国立西洋美術館本館 - (2007年9月)
●自然遺産 ・小笠原諸島 - (2007年1月)
●複合遺産 なし
ところが、現在日本全国では、さらに多くの文化遺産候補、自然遺産候補が暫定リストへ、さらには世界遺産登録へ向け熱いキャンペーンを繰り広げています。 可能性が高いものから少々難がありそうなものまでさまざまです。たとえば・・・?
可能性が高いのは、まず、北海道の「クリスキー自然保護区と国後の自然遺産」です。 ロシアも登録を検討中で、IUCNもその自然の価値を評価しています。 さらに北海道では、霧で有名な「摩周湖」、「函館要塞」などです。摩周湖は、日本で最も透明度の高い湖の一つで、 約7000年前の巨大噴火によって生成された窪地に水がたまったカルデラ湖であり、アイヌ語では「キンタン・カムイ・トー(山の神の湖)」というそうです。 周囲は海抜600m前後の切り立ったカルデラ壁となっており、南東端に「カムイヌプリ(神の山)」(摩周岳・標高858m)がそびえています。 摩周湖は流入・流出河川がなく、大気汚染の影響が如実に反映されるため、地球環境の変化を知るモニタリング対象にもなっているのです。
また、北海道、青森、岩手、秋田でそれまで別々に運動をしていた「道南・北東北の縄文遺跡」も一括して運動を開始し、その可能性を高めています。 山形の「出羽三山と最上川が織りなす文化的景観」は文化庁の第1回暫定リスト公募への応募から審査を継続中ですし、 関東地方では、明治時代後期に発生した日本の公害の原点である、栃木県「足尾銅山」が名乗りを上げています。 2007年ニュージーランドでの第31回ユネスコ世界遺産会議で島根県の「石見銀山遺跡とその文化的景観」が文化遺産に登録されたことを受け、
この栃木県の足尾銅山や、新潟県の佐渡銀山なども盛んに運動中です。
その他、約7,000本の松林が続く長さ3.3kmの砂州、およびそれを展望する傘松公園を含む京都府宮津市の「天橋立」。 百人一首の小式部内侍の歌に見られるように古代から名所として知られており、江戸時代から宮城の松島、広島の宮島とともに日本三景の一つとされてきました。 他にも、富山県・飛騨山脈(北アルプス)にあり、日本三名山・日本百名山の一つである「立山・黒部」、 長野市大字長野に位置する無宗派の仏教寺院の「善光寺」、1970年に大阪府吹田市で開催された日本万国博覧会で 岡本太郎が制作した「太陽の塔」。「四国八十八所霊場と遍路道」「四万十川」「鳴門海峡」などが運動を展開中です。 また、無形文化遺産として、岐阜県「長良川鵜飼」が運動中です。このようにしてみると、その地域の方々がどれほどその物件を大切に思い、遺産として保持していこうとしているかがよくわかります。 また、日本にはこんなにたくさんの魅力があるのだな、と改めて感心感動もしますよね。
現在、世界中の注目と期待を集めている世界遺産。しかし、その登録をめぐって幾つかの問題が指摘されています。 そのひとつとして、「文化遺産と自然遺産の数の不均衡」があります。
文化遺産と自然遺産の数の不均衡
2007年現在、登録されている世界遺産は総数で851件です。そのうち文化遺産は660件、自然遺産は166件、さらに複合遺産は25件です。 まず、文化遺産、自然遺産、複合遺産のそれぞれの定義を確認しましょう.
・文化遺産・・・顕著な普遍的価値を有する記念物、建物群、遺跡、文化観など。
・自然遺産・・・顕著な普遍的価値を有する地形や地質、生態系、景観、絶滅のおそれのある動植物の生息・生息地などを含む地域。
・複合遺産・・・文化遺産と自然遺産の両方の価値を兼ね備えている遺産。
文化遺産が自然遺産の4倍近いという不均衡の理由のひとつは、自然遺産の保護が難しい、ということがあります。 つまり開発と保全の摩擦が生じ易いということです。 たとえば、自然遺産に登録されている、インドの「マナス野生生物保護区」、中央アフリカ共和国の「マノヴォ=グンダ・サン・フローリス国立公園」などは危機遺産に登録されています。
文化遺産と自然遺産の登録数の不均衡のもうひとつの理由は、自然遺産の場合、対象となるのはひとつの山や谷、というのではなく、 ある程度の面積をもつ地質、生態系、景観などの全体です。したがって、1つの教会、遺跡、という文化遺産と比べ、その「普遍的な価値」の見極めが難しいということがあります。 また、登録の条件として、登録された後、将来にわたって継承していくための保護や管理がなされていることが必要とされます。 そのために登録後、保全状況を6年ごとに報告し、世界遺産委員会での再審査が行われるのですが、やはり、生態系全体の保全は難しく、 またその評価も困難です。
しかし、「普遍的な価値」を持っていると共に、これからもずっと「持っていて欲しい」ものとして、 文化遺産と自然遺産、共に認め、保全に努めていきたいですね。
どうしたら世界遺産に認められ、登録されるのでしょうか? 世界遺産リスト登録までの大きな流れを追ってみることにします。
1.登録を求める地域の担当政府機関が候補地を推薦し、「暫定リスト」(*1)を提出します。
2.ユネスコ世界遺産センターが評価を依頼します。
●文化遺産候補については、国際記念物遺跡会議(ICOMOS)が現地調査をし、報告します。
●自然遺産候補については、国際自然保護連合(IUCN)が現地調査をし、報告します。
3.評価を受け、ユネスコ世界遺産センターが登録推薦を判定します。
4.世界遺産委員会で最終的な審議が行われ、認められれば正式登録となります。
登録に必要な要件は、「顕著で普遍的な価値」をもつことです。
文化遺産、自然遺産ともに登録の基準が定められており、少なくともその1つは満たしていると判断されることが必要です。
さらに、登録後は、将来にわたって継承していくための、保護管理が求められることになります。
登録後、保全状況を6年ごとに報告をし、世界遺産委員会で再審査を受ける必要があります。
(*1)「暫定リスト」とは、世界遺産の登録の前に各国がユネスコ世界遺産センターに提出するリストです。 暫定リストへの掲載に当たって、世界遺産委員会は、条約締結各国に次の点を求めています。 1.その遺産の「顕著で普遍的な価値」の厳格な吟味。 2.保全活動の適正な実地。
日本では、文化遺産候補については文化庁、自然遺産候補は環境庁、林野庁が主に担当します。 さらにこれに文部科学省、国土交通省などで構成される世界遺産条約関係省連絡会議で推薦物件が決定されます。 そしてこれが暫定リストとして、外務省を通じてユネスコに提出されるのです。